『雇用の流動性』至上主義論が嫌い

雇用の流動性。ネットで日本の労働環境に対しもっともらしい事を語っている人でも、この言葉を見ただけで、だめだこいつ……となります。それまでがよかっただけにほんと残念、という気分になります。
雇用の流動性それ自体は、いい事でも悪い事でもないと思うんですよ。海外の、労働環境が良い国でも、流動性の高い国もあれば低い国もある。それなのに雇用が流動化すれば万事OK!とばかりに語るのは、怪しいものを売り付ける営業みたいです。とても胡散臭い。
そして日本は既に雇用の流動性は高い国です。これ以上の雇用の流動性を求める事は、更なる社会の不安定化、貧困化を招く事でしかない。ごく一部を除いて日本における雇用の流動化って、基本的に上から下への移動でしかないんですよねー。博士課程を出てフリーター、なんていうのもその一種ですし。
就業時の年齢差別や性差別を禁止する事による転職の自由度を高めるとか、大人でも大学や専門学校に入り直して新たな分野に挑戦が出来るようにしようという主張ならいいんですが。雇用の流動性万能論の人達は何故かそういう点には触れないんだよなー。雇用の流動性の高いと言われるアメリカだって、人種差別をしないようにうるさいんじゃないんですか(実際には差別も多いんでしょうが)。
大体経営者の立場になってみれば、優秀な人を高く雇うよりも優秀な人を安く雇おうとする訳で。自由になった所で労働者の価値は上がるどころかどんどん地盤沈下していくと思います。それに解雇が自由になればどんどん人を雇って失業率が改善されるどころか、解雇だけして少ない人数で回そうとする事の方が多いと思いますよ。企業の側からすれば、5人に一日8時間ずつ働かせるよりも4人に一日10時間ずつ働かせた方が効率がいいのですから。現実はそんなものですよ。理想的に回る訳がない。サービス残業、お客様至上主義、職場外でのコミュニケーションの強要、その辺りを放置したままで解雇規制の撤廃とか言われましても。日本の労働環境のブラックさは、雇用の流動化では解決しないでしょう。
雇用の流動性が高くて上手く回っている国というのは、本やネットで見た限りでは、企業規模や雇用形態によらない同一労働同一賃金が徹底されていたり、企業別ではない労働組合が機能していたり、失業給付が十分に保障されていたりするようですが、そのような条件を無視して雇用が流動化すれば万々歳とばかりに語る人達は酷く胡散臭い。
日本において雇用の流動化を進めるのは、コードレスバンジーをするようなものだと思います。

http://d.hatena.ne.jp/hokusyu/20090106/p1
雇用の流動性をはかれという議論に欠けているもの

http://sekakata.exblog.jp/7305923/
雇用の流動化で非正規労働者は救われるか

http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20090107
雇用流動化論というまやかし

http://d.hatena.ne.jp/JavaBlack/20080603/p1
雇用流動性と解雇規制は無関係

この辺りに賛同。


これは海外では婚外子率が高い、日本も婚外子を増加させて出生率を上げようという理論に似ていると思います。欧州諸国と日本では、女性の所得などの前提が違っていると思いますが、そこを無視して婚外子率だけを上げると言っても仕方がないでしょうに。一部のエリート層にいるフェミニストには、日本の一般女性の置かれている状況が分からない。
個々人はそんなもの特に望んじゃいない訳ですよ。押し付けれた『自由』は不自由と同じく迷惑です。
いずれにせよ、実際に生活する人々は結構保守的なものです。安定を望む人は多い。そこを無視して全体に自由化を押し付ける理屈が嫌い。