『クジラの子らは砂上に歌う』

書店でふと手に取って読みました。このマンガがすごいに選出されたりして、今絶賛ステマ中らしい。
作者によればあくまで少女漫画との事ですが、どちらかというと男性に受けそうな話だと思いました。近いうちにアニメ化しそう。
今の所面白いけれど、連載が続くと進撃の巨人みたいにダレそうで怖いです。やはり連載漫画は完結してからでないと怖くて読めない……。

砂の海を行く泥クジラに乗って生活する、500人程の人々の話らしいです。世界観がナウシカラピュタの頃のジブリって感じ。砂を感じさせる絵が美しい。単行本のおまけページに各種設定や習俗などが載っていてなかなか面白いです。
面白いと思ったのは、サイミアと呼ばれる特殊能力を持つ人々(印と呼ばれる)が多数派で寿命が短く、特殊能力を持たない人々(無印と呼ばれる)が少数派で寿命が長いという点ですね。印の人々は三十年前後で亡くなり無印の人々は我々と同程度に長生きする。それゆえに首長をはじめとする指導者は無印の中から選ばれるとか。特殊能力ものだと能力者が差別されている作品が多くそれにいまいち納得いかなかったのですが、この作品は寿命という要素を絡めた所がよかったと思います。それも寿命の長い方も不老という訳でもなく、あくまで現実の人間程度の長生き。しかも印の方が圧倒的に多数派である事から、そちらが差別されているという印象も受けない。印に生まれるか無印に生まれるかは血縁と関係ないらしいのも面白いですね(兄のスオウが無印で妹のサミが印だったりする)。
ただ、この手のファンタジーによくある事として、子供は純粋で前向きで大人は汚く保身的だというありがちな流れになっている部分もあるのがやや残念(この手の子供様至上主義のテンプレにはもういい加減うんざりなのです…。創作する側も大人が多いだろうに、なんでこうまで大人sage子供ageの作品ばかりが量産されているのか)。無印であり、首長タイシャ42歳を慕うクチバ39歳の存在がかすかな救いか。
ナレーションは主人公チャクロが未来から振り返るという形のようなので、最終的には主人公がちゃんと歳を取って素敵な大人になっている終わり方である事を祈る。