湊かなえの『母性』

湊かなえの『母性』を読みました。
しかし、んー。いまいちでした。母子密着とか、子供を上手く愛せない母親、父親の無責任さといったテーマは良いと思うのですが、ミステリーやホラーとして考えると面白くない。
最後に清佳の名前が呼ばれるけれど、あの意味がいまいち分からない。我孫子武丸の『殺戮にいたる病』のように、母かと思われていたのが実は娘だったみたいなどんでん返しがあると面白いかと思ったのですが特にそういう事もなく。単に娘が名前すら読んでもらえていなかった不憫な子だったって事なんですかね。もし娘の名を付けたのが父で、仁美から一文字とった名前だったりしたら、母親から嫌われる理由がわからなくもないのですが。あるいは母の名がルミ子なら、おばあちゃんの名前がルリ子とかルイ子とかそういう名前で、娘にも同種の名前を付けたかったけれど姑に阻まれてしまったとか……。
冒頭の教師が実は娘本人だったというのだけではいまいちオチとしては弱いような。
ミステリー的な真相で言うのなら、嵐の日のおばあちゃんの死を招いた諸悪の根源は絵を取りに戻った父(ルミ子の夫)であったというのがそれなのかもしれませんが。その扱いも軽くていまいちよく分からない。
その夫は戻ってきて愛人とも別れ、ルミ子は姑の介護で苦労しているが名前を呼んでもらって報われ、って上手くまとまりすぎのような。
最後が何となくハッピーエンドみたいになっているのも、それまでがドロドロ過ぎるだけに釈然としない。このストーリーなら清佳もまた娘を産んでその子の事を上手く愛せず虐待の連鎖が起こるという終わり方の方が相応しかったような…。ループオチの方が似合ってるように思うんですよね。