シンデレラ妄想

久しぶりにテレビを付けたら、NHK教育の『課外授業ようこそ先輩』で林真理子の回が再放送されていました。結構面白かったです。童話『シンデレラ』を違う角度で見て、十年後のシンデレラを妄想して書くという授業のようで。この人叩かれてるけど普通に面白いよねーと思いました。

で、十年後じゃないけれど、以前シンデレラのパロディを考えたのを思い出しました。

「私のシンデレラ妄想」

シンデレラの父は二人の娘を持つシングルマザーと再婚しました。彼女は亡き妻よりもずっと年下だったけれど、随分と若い時に産んだらしく、父親の違う娘達は二人ともシンデレラよりも年上です。美しい姉達は、けして美しいとは言い難いシンデレラをいじめました。ブスならせめて家事くらい出来ないとお嫁に行けないわよーと言って家事を全て押し付けます。お金持ちなので臨時の際にはメイドも雇いましたが、常時雇用の使用人は福利厚生にコストがかかるため採用を控える方針でした。典型的な家族経営のブラック企業でしたが、他に行き場もないシンデレラはデモもストも出来ずに働くしかありません。それでもいつかこの環境から逃れるために、時間を見付けては勉強していました。
お城で王子の花嫁選びのパーティが開かれると告知され、継姉達は色めき立ちます。シンデレラは当然のように華やかな舞踏会などとは無縁だったので、いつものように街に食料の買い出しに行きます。
王子はお忍びで街の市場を歩いていました。落し物をしましたが王子と知られていない状況では誰も探すのを手伝ってくれません。自分から声を掛ければよかったのですが、気遣われる事に慣れている王子にはそれができませんでした。そこにみすぼらしい娘が通りかかり、買い物の途中にも関わらず手伝ってくれました。二人はしばし立ち話をしました。短い会話の中で感じた彼女の聡明さと優しさに王子は惹かれます。
そして舞踏会の夜。シンデレラの名付け親である妖精の老女が魔法をかけてくれます。美しい顔に変わり、ドレスを着たシンデレラはかぼちゃの馬車でお城に向かいます。車体はかぼちゃ、馬はねずみ、今流行りの再生可能エネルギーの馬車です。
舞踏会には気が乗らない王子でしたが、会場に現れた美女が街で会ったあの娘と同じ癖を見せるのを見て興味を抱きます。顔は違いましたが、共にダンスを踊るうちに確かにあの娘であると確信します。しかしそれを言い出す前に12時の鐘がなり、彼女は会場から走りますが階段でガラスの靴を落とします。
後日、靴に合う足の持ち主を探すため、使者が国中の家々を回り、シンデレラ達の家にもやってきます。シンデレラは加わるつもりなどかったのですが、目ざとく見つけた使者に促されて靴に足を入れます。もちろん靴は彼女の足にぴったりです。
強引に馬車に乗せられ王子の元に連れて来られたシンデレラは、本当の私がこんな顔でがっかりしたでしょ、と言って逃げ出そうとしますが、違う、舞踏会からじゃない、街で初めて会ったあの時から君が好きなんだ、と王子は言います。シンデレラは彼女自身が王子を偏見の目で見た事に気付き反省します。王子という虚像ではなく、あの時街で会った彼自身と向き合いたいと考え、結婚を承諾しました。
継姉達は悔しがりますが、シンデレラと違って美人な彼女達ですからいずれは素敵な相手と結ばれる事でしょう。王子が特殊だっただけで所詮殆どの男性は容姿重視なのです。
王子の妃になったシンデレラはやがて国政に携わるようになり、児童虐待の防止やブラック企業撲滅に尽力し、よき為政者として知られるようになりました。めでたしめでたし。